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新・落語スズメvol.37

『博覧強記』

文/松田 一成

出会いは、旧日本兵姿の男と、鉢巻を締めたもんぺ姿の女が並んで写っていた写真。20年ほど前、その芸人の結婚報告の写真。今は亡きミリオン出版から刊行されていたサブカル系雑誌『GON!』の1ページを飾ったものだったと思う。『大本営八俵』、ずいぶん偏った芸名だが、ご想像通り、なかなか世間には出にくい、いや、まず無理であろう芸風。浴衣姿に革靴、頭には大日本帝国陸軍の略帽、ご丁寧に帽垂の代わりにタオルが仕込んである。趣味の悪いサングラスから、キャッチフレーズは「戦後生まれの傷痍軍人」。登場するや否や、まず、参加者全員(そう、お客様も)による大日本帝国万歳の三唱。もちろん手のひらは内側に。その後は圧倒的な知識を持って世相へのアジテーション。カルト芸人のくくりかと思えばさもあらず。またの名を『居島一平(おりしまいっぺい)』。テレビ向けには、米粒写経の片割れとして、ブルースブラザースのジョンベルーシよろしく黒いスーツに、こちらは白ネクタイ。シネ漫談というそうだが、最近は『佐分利信クイズ』に大笑い。佐分利信が出演している映画のワンシーンを声帯模写で表現し、どの映画の、どの場面か当てさせるのだが、これがまるっきりチンプンカンプン。もともと口調のはっきりしない佐分利信のモノマネに加え、会場のほとんどは佐分利信が何者かわかっていない。それがひとしきりネタが進むと、参加者、そう、観客ではなく参加者になってしまうのだが、全員が佐分利信マニアになってしまうという恐ろしい漫談だ。『大本営八俵』も『居島一平』も本質は変わらない。客を扇動するプロパガンダ芸。前置きが随分長くなったが、その『大本営八俵』と『居島一平』が来月福岡で続けてみられる。9月25日『大本営八俵の福岡非常呼集』翌26日『博多活弁パラダイス』。いずれも福岡市美術館ミュージアムホール。おすすめです。

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