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新・落語スズメvol.36

『山田五十鈴から

クラフトワークまで』

文/松田 一成

東京に憧れた理由は、原宿のピテカントロプスに行ってみたかったのと、映画で見た吾妻橋のたもとのビアホールで風にあたってみたかったから。残念ながらアタシが東京で学生生活を送る頃にはそのどちらも無くなっていましたが。(代わりに西麻布のレッドシューズと、銀座ライオンでアタシは自分を慰めていたと思う。)その吾妻橋のビアホールが出てくる映画の話。『の・ようなもの』。1981年森田芳光監督作品。森田自身が日芸(日本大学芸術学部)の落研出身ということが関係あるのかないのか、真打を目指す若手落語家達の青春群像物語。主役はこの作品がデビュー作の伊藤克信。栃木訛りの二つ目落語家を演じているがその伊藤の語りがいい。恋人役の秋吉久美子や好きになった女子高生由美との掛け合いが訥々と続くのだが、ロマンスというより、何をしているんだろうという自分自身を俯瞰している様子がたまらなくおかしい。伊藤は(劇中では志ん魚[とと])女子高生の親に怒られ、仕方なく夜中長い距離を歩いて帰る羽目になるのだが、その歩いて帰っていく道すがらを口に出して描写していく。その、落語でいう道中付けのシーンがせつない。言葉の選び方と伊藤の口調が、調子のいい江戸言葉であるはずの落語とは違った美しさを想像させる。その道中付けのなかに、件の吾妻橋のビアホールが出てくるのだ。あの時代を知っている世代には、現代版(とはいっても40年前の)東京恋慕帳か(笑)尾藤イサオの歌と、先代柳朝のカメオ出演も見逃せません。この夏、外に出られない貴兄に是非。

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