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新・落語スズメvol.33

『ライブにて』

文/松田 一成

文/松田 一成 福岡に制限が出るちょっと前、コロナ禍になって初めて、マニアックに愛しているロック歌手のライブに出掛けた。親と子ほど年は離れているのだが、愛しているのだから仕方ない。福岡まで来てくれるのだからと、少し緊張して会場に。ロゴスでもブードゥーラウンジでもなく、雑居ビルの貸ホール。入場にスマホのQRコードを読み込ませるところから始まった。扇形に間隔をとって椅子を並べ、要の部分に、白い箱を積み上げた畳2枚分程のステージ。すぐ後ろには、空気の入れ替えの為、カーテンの引かれていない大きな窓から天神の夜景が見える。ロックバンドなのにドラムもベースもないギター一本だけのソロライブ。開催すること自体、非難されることかもしれない、アタシも客の一人として椅子に腰を掛け会場を見回して、コロナ禍に配慮したこの空間に考え込んでしまった。アタシはまだいい、表現者であるアナタはどうなんだと。ロック歌手であるアナタはこんな屈辱的な制限を受けた中、何を伝えたいのかと。結局、開演中、客は一度も大声を上げることなく、一人も椅子から立ち上がることなく、静かに終わった。ただアタシは思い違いをしていました。中途半端なライブになるであろうとする最初の予感は、そのロック歌手の登場とともにすべてが吹き飛んだ。この時間を共有できることの喜びに比べれば、そんな制限なんて苦行でも何でもない。自分の欲求は抑えきれない、自分の思いは伝えたい、でも迷惑はかけられないという客と演者の真摯な思いが、静かなライブだからこそ余計伝わったかもしれないなと。あまりこんな経験はしたくないけど。

追伸 そんななか浅草演芸ホールのお知らせが洒落てます。東京都から「無観客開催」の要請があったことに対し、「『社会生活の維持に必要なものを除く』という文言があり、大衆娯楽である『寄席』は、この『社会生活の維持に必要なもの』に該当するという判断から、4月25日以降も通常通り営業することといたしました」と。エンターテーメント、かくあるべし。

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