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高良川縁起 Archive

高良川縁起 その5

『田植えが終わった後に…。早苗饗焼酎』

文/高良川 ほとり

さてさて、今年の梅雨入り、はやかこってす。例年より二十日もはやいんだとか。筑後平野は二毛作、刈り取りを待ちわびる麦が黄金色の海のようでとてもきれいですね。あの麦はラーメンじゃろか、こっちはビールじゃろか、と想像しながら眺めております。麦が終われば急いで代掻き、田植え、という算段ですが、どどんとタイムスリップしまして江戸時代に活躍しましたのが、やっぱり当くるめすたいる筒井編集長も大好きな筑後のおさけの歴史に深くかかわる「酒粕」であります。

肥料というものがまだまだ乏しい江戸時代、酒粕は田んぼの肥やしとして活用されておりましたが、そのまま畑にいれますと粕の中に残ったアルコールが邪魔をします。これを飛ばすために下から蒸気をあて、肥料に加工する過程で偶然、生まれたのが粕取り焼酎だといわれています。きっと編集長のような酒好き…じゃなくて知恵者が思いついたのでしょう。「この蒸気を冷やせば焼酎ったい!」

冬につくられた酒が絞られ、その粕を再発酵、アルコールを飛ばして作られた肥料は、水車とならんで稲作の発展を支えたことでしょう。その蒸気をあつめてできた焼酎は、田植えが終わっての宴会で「ふるまい酒」として親しまれ、別名さなぼり(早苗饗)焼酎とも呼ばれました。

製法には二つございまして、酒粕に蒸気を通りやすくするためにもみ殻を混ぜてうるかし、鉄兜と呼ばれる蒸留器で蒸気を集めます。この伝統的な製法で造られる粕取り焼酎を「正調粕取り焼酎」と呼びます。ガツンとくる荒っぽい香りが持ち味。

一方、酒粕に水と酵母を加えて再発酵させてから蒸溜するという新しい方法も。「吟醸粕取り焼酎」こちらは香り高くスッキリした味わいがたのしめます。

どちらもそれぞれ異なる魅力があるのでぜひ飲み比べを。夏のじっとり暑いなかロックもよし、さっぱりと炭酸で割るもよし。育ちゆく稲に、どうどうと流れる筑後川に想いをはせてみませんか。

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早苗饗焼酎の蒸留

写真は杜の蔵の
古式木製セイロ蒸留

高良川縁起 その4

『筑後の米作りと水車の歴史』

文/高良川 ほとり

さあさあ、先月は水車の話題でございました。当くるめすたいる筒井編集長も大好きな筑後のおさけの歴史に深くかかわる「水車」でもあります。

水車といいましても、その回転力を生かして動力とするものと、水をくみ上げ田畑を潤すためのものとの二種類に大別できます。製粉、精米に使われるものは前者のタイプ、朝倉の三連水車は後者のタイプですな。日本酒の原料といえば米、その米をつくるためにはいかに田んぼに水を引き込むか、くみ上げるか、ということに苦心してきたのであります。水車が普及する前は、川から桶をつかいくみ上げるほかありませんでした。

江戸時代の初期に大阪の方が発明した踏車(とうしゃ・ふみぐるま)という足踏み式の灌漑水車を、三潴郡大莞村(いまの大木町)の猪口万右衛門さんが改良されたそうです。「万右衛車」といいまして、当時の価格は米一石と同じといいますからなかなか高額な機械だったことがうかがえます。この踏車、大川でつくられ、久留米のみならず佐賀など筑後平野一円で活躍していたようです。

筑後平野には森林資源の豊かな八女もありますし、また、玖珠や日田の木材を筏に組んで大川に集積し、木工細工にたけた職人が多数いたという人的資源もありました。こういった背景に支えられて筑後平野の米作りは発展していったのです。

余談ですが幕末に久留米の田中近江、のちのからくり儀右衛門は水車機の改良も手がけました。のちに東芝が我が国初の水車発電機を明治27年に京都の蹴上発電所に納めたのも、なにかのご縁なのかなと思います。

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高良川縁起 その3

『一ノ瀬親水公園と水車』

文/高良川 ほとり

季節は移り、高良川の土手は菜の花が咲いております。大根の季節もおわりそろそろ水量も復活してくる時期でしょうか。これから暖かくなるにつれ上流部にある「一ノ瀬親水公園」も賑わってくることでしょう。桜がきれいですし梅雨のころには蛍が乱舞してくれます。ちなみに親水公園だけでなく高良川流域では蛍があちこちで見られます。信愛の先、最所産業さんのGSんにきから東国分小学校裏手んにきまで、オススメです。ちょっとじめーっとした蒸し暑い夜にどうぞ。

ちょいと話がずれました。一ノ瀬親水公園といえばもうひとつ、水車が有名です。直径6mとなかなか大き目、朝倉の三連水車でもいちばん大きな水車の高さは4.8mといいますから、なかなかのもんです。実は親水公園から下って竹の子までの地区を「水車谷」といいまして、明治初期に庄屋さんが据え付けたのを一番水車として最盛期には十番水車、番外まで含めると二十軒ほどが高良川の水力を利用して精米、製粉業として営業していたそうです。時代がくだり動力としてモーターが普及してからは衰退の一途をたどりますが、時間をかけて製粉するため熱がかかりにくく、特に蕎麦などは一味ちがう!とこだわられる方も。広川町の「逆瀬ゴットン館」は高さ7mの水車でひいたそば粉に、逆瀬谷薬師堂の地下水を使ったこだわりの「水車そば」が有名です。

上陽の馬場水車場では、お線香の材料につかう杉の粉を水車で製粉されています。「水車でついた杉線香」シンプルでいいですよー。くるめスタイルでコラムを連載されている「天年堂」さんでお求めいただけます。お店は十三部から苅原へと向かう途中「宮園」信号んにきです。ぜひ。

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一ノ瀬親水公園の水車

高良川縁起 その2

『水にまつわる弘法大師様』

文/高良川 ほとり

先月は久留米大水害のお話をしましたが、今月も引き続き水にまつわるお話。弘法大師様です。いやいや関係ないじゃんと突っ込まれそうですが、そもそも弘法大師様は日本における真言密教の祖であり雨乞いの法要などもばっちり。仏教だけでなく測量や堤防構築などの最新建設技術も習得していたと思われます。有名なところですと香川県にあります日本最大の灌漑用のため池「満濃池」の改築を指揮した記録も残っております。時の天皇からの信頼も厚かったのもうなづけますなあ。

さてさて、全国に足跡をのこす弘法大師様。九州にも唐からの留学を終えたのち二年ほど滞在されたそうで、各地に伝説がのこっております。初夏の風物詩、筑後川の「えつ」も、対岸に渡れず困っておりました弘法大師様を見かねた老漁師、向こう岸までのせてあげたところ、お礼にとアシの葉をちぎって川に投げいれたところあら不思議、銀色の魚となり以後漁師はこれを生活の糧として困ることがなくなった、とあります。

実は高良川にも弘法大師様にまつわるお話がございまして。ある日、高良川のあたりをさるいておられた大師様、ちょうど川で百姓が大根をあらっておったのが目にはいりまして。さて一本恵んでくれんじゃろうか、とお願いしたところ、すげなく断る百姓。その態度に腹をたてた弘法大師様は、大根あらわれんごつ水を枯らしちゃる、と真言を唱えますとあら不思議、毎年大根の収穫時期には川が干上がるようになりました。それ以来高良川のことを別名「大根川」とも呼ぶようになったんだとか。そういえば、高良川とバイパスが交差するあたりに、弘法大師様を信仰する小さなお堂がありました。しかしまあ、どちらも料簡の狭いちゅうか、けちくさいちゅうか。よっぽどおなかすいてたんでしょうか。それとも、弘法大師様とはいえ一人の人間であったとの証左でしょうか。(続く)

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高良内小学校脇のあたり

いまでも軽トラごと川にはいってねぎやほうれん草をあらっている人をみかけます。

高良川縁起 その1

『高良山を源とする・・・』

文/高良川 ほとり

はじめまして。私、生まれも育ちも久留米でございます。高良川で産湯をつかいました根っからの久留米っ子、姓は高良川、名はほとり、人呼んでフーテンの・・・ってえのは冗談ですが、皆さん、筑後川はご存じだとおもいます。が、高良川はご存じでしょうか?筑後の守り神、高良山を水源として高良内町、国分町、野中町、合川町を流れて筑後川へと合流いたします。全長12.4㎞の一級河川です。上流の「一ノ瀬親水公園」は夏になると子ども連れで賑わいますし、下流の「筑後川発見館 くるめウス」は子どもたちの学習拠点のみならず、防災拠点や筑後川流域のことを知りたいときの手がかりを提供している施設ですよ。堤防沿いの道は春のウオーキングイベント「久留米つつじマーチ」のコースの一部となっていますので、ご存じの方も多いかと。

そんな高良川を起点に、水の話や生き物の話、久留米の昔話などを掘り起こしてお届けしたいと思っています。去年の夏はえらい水害でした。久留米で水害というと昭和28年の大水害が出てきますが時代は令和、今年は昭和96年でございます。昭和は遠くになりにけり、と申しますがすでに70年ちかく前のこと。その水害の痕跡ってどこか残っているんですかね?西鉄久留米東側にあったユニード外壁にうっすらと跡が残っていたのを覚えております。国分の辺りですが、古い農家さんの納屋に小さなボートが壁にかけてあったのも記憶にあります。水害への備えですね。ちなみに高良川合流地点の合川町河川敷は標高5m、以前井筒屋があった六ツ門が11mで国分の辺りが40mほどですから、当時の浸水被害はなかったのでしょう。が、羹に懲りてなますを吹く、の成句もございます。去年の夏は、と申し上げましたが、もしかしたら今年「も」となるやもしれません。備えあれば憂いなし、でございますヨ。 (続く)

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去年のどんとやき(高良川河川敷)

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