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新・落語スズメvol.14

『粗忽長屋』
文/松田 一成

「抱かれてるのは確かに俺だが、抱いてる俺は誰だろう?」ご通家の方ならピンとくるかも、落語『粗忽長屋』のサゲ。最近立て続けに聞くこととなった。一席は、大ホール二人会、もう一席は40名ほどの定例会、演者はそれぞれ。粗筋はこう。身元不明の行き倒れ騒ぎに出くわした八五郎は、その行き倒れは今朝まで一緒だった熊五郎だと言う。見物人からは、行き倒れは昨晩からだったから人違いだと言われるが、いやいや、人様に迷惑をかけてはいけない、熊五郎本人にその死骸を引き取らせると八五郎奔走。いきなり「お前は死んだんだ」と言われた熊五郎も、自分の粗忽さ加減をいろいろ指摘されなんとなく納得。そこでその死骸を抱きかかえながら熊五郎、冒頭のセリフ。五代目小さん(インスタントみそ汁のコマーシャルに出てた人、立川談志の師匠)に言わせると、粗忽ものと言われるジャンルの噺の中で最も難しいと。実際、先般のホール落語の中では最大公約数的に、八五郎、熊五郎それぞれの慌てぶりを面白おかしく並べたて、笑いにつなげる、これぞ本道、間抜けなオチがじわじわと客席を笑いで包んだ。一方定例会の演出は、八五郎の正義を盾にした暴走を前面に押し出す。初め熊五郎は八五郎を信用していない。どちらかというと、ホール落語の演出と違って、熊五郎は常識を持ち合わせた小市民といった設定。抵抗を試みるが、八五郎の正義に翻弄され、徐々に追い詰められ、自分自身を見失っていく。ついにはその死骸と対面する。件のサゲ。死骸は俺ではないと最後まで信じたいが、状況は絶望的。テーゼを変えるしかないのかという結論、熊五郎の最後の抗いに聞こえた。正義を声高に叫ぶ者の前ではすべてが無力。もう笑うしかないという熊五郎の状況に、笑った笑った。同じ話を聴いたと嘆くなかれ、噺家のセンスはこうも偉大。

祝伊丹十三賞受賞!今年も久留米に『ほとばしる浪曲!玉川奈々福』がやってきます。11月4日 午後2時開演 久留米シティプラザCボックス。前売り・予約/2500円。問い合わせ・ご予約/久留米で落語の会 090(2511)5371

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